← 事件一覧に戻る
民事事件

「石に泳ぐ魚」事件(表現の自由とプライバシー)

小説の登場人物として、自分そっくりの、しかもかなり残酷な描写のモデルにされてしまった女性。発売前に、その本を止めることはできるのか?

最高裁判所第三小法廷・2002年(平成14年)9月24日・最判平成14年9月24日集民207号243頁

事件の概要

作家・柳美里が発表した小説の登場人物は、顔に持病による症状があるという設定で描かれており、実在する女性をモデルにしていた。モデルとされた女性は、自分と特定できる形で身体的特徴やプライバシーに関わる事実を無断で描写されたとして、出版の差し止めとの支払いを求めて提訴した。

法廷でのやり取り

👨‍💼 原告(モデルにされた女性)
小説の中で、私だと特定できる形で、身体的特徴まで残酷に描かれています。出版前に止めてください。
🧑‍⚖️ 被告(作家)
これは文学作品であり、として保護されるべきです。

📜 と、モデルにされた個人の尊厳。裁判所はどちらを優先すべきでしょうか。

あなたが裁判官なら?

文学作品としての「」と、モデルにされた個人の「プライバシー・名誉」が対立する場合、裁判所は出版の差し止め(=発表そのものを止めること)まで認めるべきか。認めるとしたら、はどの程度が妥当か。

※ このコンテンツは教育・エンターテインメント目的で実際の判例を簡略化して紹介しており、法的助言ではありません。用語の下線をタップすると、やさしい解説が表示されます。

▶ この事件の結末を先に読む(答えが表示されます)

裁判所の判断

最高裁は出版差し止めを認め、あわせて合計130万円の損害賠償の支払いを作家と出版社に命じた。

そう判断した理由

最高裁は、モデルとされた女性が公的な立場にある人物ではなく、公表による社会的意義が大きいとは言えない一方、公表されることで女性の受ける精神的苦痛は大きいとして、プライバシー・名誉権が表現の自由に優越すると判断した。

この判例が持つ意味

表現の自由とプライバシー・名誉権が正面から衝突した事案で、最高裁が出版物の事前差し止めまで認めた数少ない例。創作物における実在人物の描写の限界を考えるうえで重要な判例。

この事件の出典

最高裁判所第三小法廷 2002年(平成14年)9月24日 判決
最判平成14年9月24日集民207号243頁

判例の内容は要点をやさしく言い換えたもので、判決文そのものではありません。教育・娯楽を目的とした紹介であり、法的助言ではありません。