← 事件一覧に戻る
刑事事件裁判員裁判 対象

尊属殺重罰規定違憲事件

長年苦しめられてきた父親を、ある日ひとりの娘が手にかけてしまった。彼女を待っていたのは、あまりに重すぎる罪の重さだった――。

最高裁判所大法廷・1973年(昭和48年)4月4日・最大判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁

事件の概要

被告人の女性は、実父から長年にわたり不当な支配・虐待を受け続け、抵抗できない状況に置かれていた。ある日、思い詰めた末に実父を殺害してしまった。当時の刑法200条は、被害者が自分の父母などの「尊属」である場合の殺人罪()について、法定刑を死刑または無期懲役に限定し、通常の殺人罪(刑法199条、当時は死刑・無期・3年以上の有期懲役)より著しく重く処罰する規定だった。

法廷でのやり取り

🧑‍⚖️ 弁護人
だからというだけで、法律上、死刑か無期懲役しか選べないのはあまりに重すぎます。これはに反するのではないですか?
👨‍💼 検察官
尊属を大切にするという道徳的な価値観を法律に反映すること自体は、直ちに不合理とは言えません。

📜 果たして、この重すぎる法定刑は憲法に違反するのでしょうか。

あなたが裁判官なら?

の法定刑を死刑・無期懲役のみに限定する刑法200条は、を定めた憲法14条に違反しないか。あなたが裁判官なら、この規定は・のどちらと判断しますか。

※ このコンテンツは教育・エンターテインメント目的で実際の判例を簡略化して紹介しており、法的助言ではありません。用語の下線をタップすると、やさしい解説が表示されます。

▶ この事件の結末を先に読む(答えが表示されます)

裁判所の判断

15人の裁判官のうち14人が刑法200条を違憲と判断した(1975年に国会が同条を削除する法改正を実施するまで、実務上は適用されなくなった)。被告人には通常の殺人罪が適用され、懲役2年6月・執行猶予3年の判決が言い渡された。

そう判断した理由

多数意見は「尊属を敬い大切にすること自体を理由に刑を加重すること」自体は不合理とまでは言えないとしつつ、死刑・無期懲役しか選べないほど極端に重い法定刑にしていた点が、あまりに立法目的とのバランスを欠き、法の下の平等(憲法14条)に反すると判断した。

この判例が持つ意味

最高裁が法律の規定そのものを違憲と判断した数少ない例の一つで、日本の違憲審査制度を語るうえで欠かせない判例。この事件を機に刑法200条は1995年の刑法口語化改正時に正式に削除された。

この事件の出典

最高裁判所大法廷 1973年(昭和48年)4月4日 判決
最大判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁

判例の内容は要点をやさしく言い換えたもので、判決文そのものではありません。教育・娯楽を目的とした紹介であり、法的助言ではありません。